平成29年度の社労士試験の結果と合格基準について

難易度社労士
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平成29年度社労士試験結果合格基準はどれぐらいだったのだろうか?

厚生労働省のホームページに掲載されている試験の合格基準、試験科目得点状況、及び合格基準の考え方から考えてみたいと思う。

社労士試験の勉強時間は800時間とも1000時間とも言われていて、平成29年度の合格率は6.8%であった。
資格試験の中でも難易度は高い方だと思うが、あまりピンとこない。

そこで、試験結果から一番難しかった試験科目は何だったのかも調べてみようと思う。

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社労士試験の合格基準について

社労士試験の合格基準は

第48回(平成28年度)社労士試験から合格者発表時に、合格基準の考え方、その年度の試験科目得点状況も掲載されるようになった。

これにより今までは推測するしかなかった合格基準の決め方、得点状況がわかるようになった。
これは画期的なことだと思う。

参考1

社会保険労務士試験の合格基準の考え方について

1 合格基準点

合格基準については、国民に分かりやすい簡易なものとすることが望ましいことから、平成12年度より、出題形式(選択式40問、択一式70問)、過去の合格基準の動向及び他の試験制度の現状を考慮し、次の条件を合格基準点とした。

選 択 式 試 験総得点40点中28点以上(12年度平均点 25.9点)

※満点の7割以上

各科目5点中3点以上
択 一 式 試 験総得点70点中49点以上(12年度平均点 35.1点)

※満点の7割以上

各科目10点中4点以上

2 年度毎の補正

上記合格基準点については、各年度毎の試験問題に難易度の差が生じることから、試験の水準を一定に保つため、各年度において、総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を総合的に勘案して補正を行うものとする。

(1) 総得点の補正

  1. 選択式試験、択一式試験それぞれの総得点について、前年度の平均点との差を少数点第1位まで算出し、それを四捨五入し換算した点数に応じて前年度の合格基準点を上げ下げする(例えば、差が△1.4点なら1点下げ、+1.6点なら2点上げる。)。
  2. ※ 前年の平均点との差により合格基準点の上下を行うが、前年に下記③の補正があった場合は、③の補正が行われなかった直近の年度の平均点も考慮する。
  3. 上記①の補正により、合格基準点を上下させた際、四捨五入によって切り捨て又は繰り入れされた小数点第1位以下の端数については、平成13年度以降、累計し、±1点以上となった場合は、合格基準点に反映させる。ただし、これにより例年の合格率(平成12年度以後の平均合格率)との乖離が反映前よりも大きくなった場合は、この限りではない。
  4. 下記(2)の各科目の最低点引き下げを2科目以上行ったことにより、例年の合格率と比べ高くなるとき(概ね10%を目安)は、試験の水準維持を考慮し合格基準点を1点足し上げる。

(2) 科目最低点の補正

各科目の合格基準点(選択式3点、択一式4点)以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する。

ただし、次の場合は、試験の水準維持を考慮し、原則として引き下げを行わないこととする。

ⅰ) 引き下げ補正した合格基準点以上の受験者の占める割合が7割以上の場合

ⅱ) 引き下げ補正した合格基準点が、選択式で0点、択一式で2点以下となる場合

 

出典:[参考1] 社会保険労務士試験の合格基準の考え方について(PDF:57KB)(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000183101.pdf)を加工して作成

 

この合格基準の考え方によると、

  • 選択式試験、択一式試験とも総得点と各科目の最低点を満足すれば合格
  • 総得点、各科目の最低点は年度毎に補正する

ということだ。

平成29年度社労士試験の難易度を試験得点状況から調べてみた

資格試験の合格基準は大まかに2つに分けられると思う。

  • あらかじめ、合格基準点が決められていているもの
  • 合格基準点は、受験者の得点状況によって毎回変動するもの

である。
社労士試験は、上記で述べた通り合格基準点は毎回変動するタイプだ。

ただこれだけでは、どれだけ試験が難しいかわからない。

社労士試験の試験得点状況

厚生労働省のホームページに平成29年度の合格基準と試験科目得点状況を掲載されている。

第49回(平成29年度)社会保険労務士試験の合格基準について第49回(平成29年度)社会保険労務士試験科目得点状況表

この情報を元に、平成29年度の合格率6.8%の社労士試験について考えてみることにする。

社労士試験の総得点の合格基準

合計得点

 

平成12、28、29年度の選択式、択一式試験の総得点の合格基準点について比べてみた。

選択式試験の総得点の合格基準

選択式試験の総得点の合格基準

試験年度平均点(前年度比)合格基準点
平成12年度25.9点(0点)28点以上
・・・・・・・・・
平成28年度20.5点(+1.9点)23点以上
平成29年度21.3点(+0.8点)24点以上

各年度の平均点は20.5~25.9点まで幅があるが、合格基準点は平均点+2点以上となっている。つまり毎年平均点と合格基準点の差は一定である。

択一式試験の総得点の合格基準

択一式試験の総得点の合格基準

試験年度平均点(前年度比)合格基準点
平成12年度35.1点(0点)49点以上
・・・・・・・・・
平成28年度28.8点(-2.5点)42点以上
平成29年度31.9点(+3.1点)45点以上

択一式試験の総得点は各年度平均点に幅があるが、合格するためには合格基準点は平均点+13点以上となっている。
選択式試験と同じく毎年平均点と合格基準点の差は一定である。

選択式、択一式試験の総得点の難易度

総得点の合格基準点は、合格基準の考え方に記載されている通りの計算方法で行われていることがわかった。

その年の総得点の平均点が前年より上下すれば、その分合格基準が前年度より上下するのである。

選択式試験は平均点より+2点以上、択一式試験は+13点以上取らなければ総得点の合格基準は達成できないことがわかる。

選択式試験は40点満点、択一式試験は70点満点であることを考慮しても、総得点の合格基準は択一式試験の方が難しいことがわかる。

試験で易しい問題が出題されれば平均点が上昇し、その分合格基準が上がるのだ。

社労士試験の各科目の合格基準

平成29年度の選択式、択一式試験の各科目の合格基準点について調べてみる。

合格基準

選択式試験の各科目の合格基準

平成29年度の選択式試験の各科目の合格基準は、下記の通りである。

平成29年度の選択式試験の各科目の合格基準

試験科目合格基準点
雇用保険法2点以上
健康保険法2点以上
その他3点以上

 

なぜ、雇用保険法と健康保険法は合格基準点が2点で、その他が3点なのか考えみる。各科目の合格基準点は、受験者の占める得点割合で決まる。

選択式試験の各科目の合格基準点は3点。但し受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げる。但し合格基準点を引き下げることにより、受験者の占める割合が7割以上になる場合や合格基準点が0点になる場合は行わない。

平成29年度選択式試験の各科目の得点状況は、下記の通りである。

 

平成29年度選択式試験の各科目の得点状況

試験科目得点割合(%)
5点~3点2点1点~0点
労働基準法及び
労働安全衛生法
91.0%7.3%1.7%
労働者災害補償保険法72.0%13.1%14.9%
雇用保険法44.9%25.1%30%
労務管理その他の労働
に関する一般常識
39.5%34.1%26.4%
社会保険に関する
一般常識
48.3%28.2%23.4%
健康保険法26.3%35.9%37.8%
厚生年金保険法52.3%18.4%29.3%
国民年金法56.0%22.7%21.3%

各科目の3点以上の受験者の占める割合が5割未満の科目は、

  •  健康保険法
  •  労務管理その他の労働に関する一般常識
  •  雇用保険法
  •  社会保険に関する一般常識

である。

よってこの4科目は合格基準点3点の引き下げ候補になる。

労務管理その他の労働に関する一般常識は、健康保険法についで3点以上の受験者の占める割合が少ない。しかし2点の受験者の占める割合が34.1%と高く、合格基準点を2点に引き下げると、受験者の占める割合が7割以上になるので、引き下げは実施されなかった。

同じ理由で、社会保険に関する一般常識も合格基準点の引き下げは実施されなかった。

雇用保険法は得点が2点以上の受験者の占める割合が、上に示した得点状況では70%(44.9%+25.1%)になっているが、これは四捨五入して記載したからで、もう少し下の桁まで計算すると69.97%でギリギリ7割未満になる。よって引き下げが実施されたのである。

平成29年度選択式試験では、労務管理その他の労働に関する一般常識の科目だけで合格候補者が受験者全体の39.5%までに絞られたことになる。

択一式試験の各科目の合格基準

平成29年度の択一式試験の各科目の合格基準は、下記の通りである。

平成29年度の択一式試験の各科目の合格基準

試験科目合格基準点
厚生年金保険法3点以上
その他4点以上

なぜ厚生年金保険法が3点で、その他が4点なのか考えみる。各科目の合格基準点は、選択式試験同様に受験者の占める得点割合で決まる。

択一式試験の各科目の合格基準点は4点。但し受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げる。但し合格基準点を引き下げることにより、受験者の占める割合が7割以上になる場合や合格基準点が2点以下になる場合は行わない。

 

平成29年度択一式試験の各科目の得点状況は、下記の通りである。

平成29年度択一式試験の各科目の得点状況

試験科目得点割合(%)
10点~4点3点2点~0点
労働基準法及び
労働安全衛生法
 75.6% 13.7%10.7%
労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の
徴収等に関する法律を
含む。)
71.8% 

15.7%

 

12.5%
雇用保険法
(労働保険の保険料の
徴収等に関する法律を
含む。)
74.8%14.4%10.8%
労務管理その他の労働
及び社会保険に関する
一般常識
66.8%18.0%15.2%
健康保険法70.6%14.1%15.3%
厚生年金保険法47.9%18.1%34.0%
国民年金法65.5%14.8%19.7%

各科目の4点以上の受験者の占める割合が5割未満の科目は、

厚生年金保険法のみで47.9%であった。

3点まで合格基準点を引き下げると、受験者の占める66%(47.9%+18.1%)で、5割と7割の間になる。

よって、厚生年金法のみ合格基準点が3点になったのだ。

選択式、択一式試験の各科目の難易度

各科目の合格基準点の基本は選択式試験3点、択一式試験4点である。選択式試験は各科目5点満点、択一式試験は各科目10点満点であることを考慮すると、各科目の合格基準は選択式試験の方が厳しいことがわかる。

平成29年度社労士試験で一番合格基準に満足していなかったのは、選択式試験の労務管理その他の労働に関する一般常識で60.5%の受験者が合格基準を満たしていなかったことになる。

このことからも、各科目の難易度は選択式試験の方が難しいことがわかる。

平成29年度の社労士試験の結果まとめ

社労士の合格基準点は、受験者の得点状況によって毎回変動するが、合格基準に従って判定されている。合否のボーダーラインには多くの受験者数がいる。

選択式、択一式試験の総得点難易度

総得点は選択式試験では平均点より+2点以上、択一式試験は+13点以上取らなければ総得点の合格基準を達成できない。

このことから、問題が易しくなれば受験者全員の平均点が上がり満点に近づき、合格基準点を満足するのは難しくなることがわかる。

選択式試験は40点満点、択一式試験は70点満点であることを考慮しても、総得点の合格基準は択一式試験の方が難しい。

選択式、択一式試験の各科目難易度

平成29年度の試験難易度は合格基準点の達成割合から、選択式試験の労務管理その他の労働に関する一般常識が合格基準点を達成するのが難しかったということになる。

問題の難易度が高くなれば、合格基準点の引き下げがあることもある。試験問題の難易度と合格基準クリアの難易度は必ずしも一致しないことがわかる。

社労士試験合格の難易度

平成29年度の試験は、選択式試験の労務管理その他の労働に関する一般常識が受験者の60.5%が合格基準を満たしていなかった。もし合格基準点が2点に引き下げられていたら、合格になっていた人も多くいたと思う。

また選択式試験の雇用保険法はギリギリ合格基準点が2点へ引き下げになったが、もし3点のままだったら、合格率は低くなっていただろう。

選択式試験は運、不運という影響もあるが、選択式試験では受験者の大半が解けるような基本問題は必ず解けるようにすることが大切である。

今度の社労士試験での健闘を祈ります。

社労士
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