令和4年度の社労士試験結果と合格基準について

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令和4年度(第53回)の社労士(社会保険労務士)試験の合格率は5.3% (令和3年度7.9%)であった。 合格率が6%を下回ったのは6年ぶりで、近年まれにみる厳しい結果となった。 社労士試験の合格基準は、事前に決まっているわけでなく、各年度の総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を勘案して変動する。 令和4年度の試験結果合格基準についてまとめてみたいと思う。

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令和4年度の合格基準

令和4年度の合格基準は下記の通りである。

令和4年度社労士試験合格基準本年度の合格基準は、次の2つの条件を満たしたものを合格とする。
① 選択式試験は、総得点27点以上かつ各科目3点以上である者
② 択一式試験は、総得点44点以上かつ各科目4点以上である者
※上記合格基準は、試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したものである。
 

社労士試験の合格基準の考え方について

令和4年度の合格基準は、公表されている合格基準の考え方で算出されている。

参考1

社会保険労務士試験の合格基準の考え方について 1 合格基準点 合格基準については、国民に分かりやすい簡易なものとすることが望ましいことから、平成12年度より、出題形式(選択式40問、択一式70問)、過去の合格基準の動向及び他の試験制度の現状を考慮し、次の条件を合格基準点とした。
選択式試験総得点40点中28点以上(12年度平均点 25.9点)  ※満点の7割以上
各科目5点中3点以上
択 一 式 試 験総得点70点中49点以上(12年度平均点 35.1点)  ※満点の7割以上
各科目10点中4点以上
2 年度毎の補正 上記合格基準点については、各年度毎の試験問題に難易度の差が生じることから、試験の水準を一定に保つため、各年度において、総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を総合的に勘案して補正を行うものとする。 (1) 総得点の補正
  1. 選択式試験、択一式試験それぞれの総得点について、前年度の平均点との差を少数第1位まで算出し、それを四捨五入し換算した点数に応じて前年度の合格基準点を上げ下げする(例えば、差が△1.4点なら1点下げ、+1.6点なら2点上げる。)。
  2. ※ 前年の平均点との差により合格基準点の上下を行うが、前年に下記③の補正があった場合は、③の補正が行われなかった直近の年度の平均点も考慮する。
  3. 上記①の補正により、合格基準点を上下させた際、四捨五入によって切り捨て又は繰り入れされた小数点第1位以下の端数については、平成13年度以降、累計し、±1点以上となった場合は、合格基準点に反映させる。ただし、これにより例年の合格率(平成12年度以後の平均合格率)との乖離が反映前よりも大きくなった場合は、この限りではない。
  4. 下記(2)の各科目の最低点引き下げを2科目以上行ったことにより、例年の合格率と比べ高くなるとき(概ね10%を目安)は、試験の水準維持を考慮し合格基準点を1点足し上げる。
(2) 科目最低点の補正 各科目の合格基準点(選択式3点、択一式4点)以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する。 ただし、次の場合は、試験の水準維持を考慮し、原則として引き下げを行わないこととする。 ⅰ) 引き下げ補正した合格基準点以上の受験者の占める割合が7割以上の場合 ⅱ) 引き下げ補正した合格基準点が、選択式で0点、択一式で2点以下となる場合  

出典[参考1] 社会保険労務士試験の合格基準の考え方について (厚生労働省)を加工して作成

令和4年度の合格基準の決め方

令和4年度の合格基準を考えるには、令和4年度の試験結果を入手する必要がある。選択式、択一式試験の各科目の必要最低点数は各科目の得点分布で算出される。 また選択式、択一式試験の総得点の合格基準は、前年度の総得点平均も必要である。

総得点の合格基準

選択式、択一式の総得点の合格基準の求め方は非常にシンプルである。今年度平均点と前年度平均点の差を少数1位まで算出し、それを四捨五入し換算した点数に応じて前年度の合格基準点を上げ下げするのである。

令和4年度の総得点の平均点、前年(令和3年)度の平均点、合格基準点は厚生労働省ホームページ([参考2] 第54回(令和4年度)社会保険労務士試験の合格基準について)で公表されている。

選択式総得点の合格基準

令和4年度の選択式試験の総得点の平均点は24.6点で、前年度の平均点21.8点より+2.8点の変動があった。前年度の合格基準が24点以上であったので、令和4年度の合格基準点は前年度より3点上がり27点以上となった。

総得点の合格基準点は平均点に応じて上げ下げしているので、毎年度合格基準点は平均点より約3点加算した点数となる。 参考までに各年度の平均点と合格基準点を示す。

選択式試験の総得点の合格基準

試験年度平均点(前年度比)合格基準点
平成12年度 25.9点(0点)28点以上
・・・・・・・・・
平成28年度20.5点(+1.9点)23点以上
平成29年度21.3点(+0.8点)24点以上
平成30年度20.5点(-0.8点)23点以上
令和元年度23.7点(+3.2点)26点以上
令和2年度22.7点(-1.0点)25点以上
令和3年度21.8点(-0.9点)24点以上
令和4年度24.6点(+2.8点)27点以上

択一式総得点の合格基準

令和4年度の択一式試験の総得点の平均点は30.9点で、前年度の平均点32.3点より-1.4点の変動があった。前年度の合格基準が45点以上であったので、令和4年度の合格基準点は前年度より1点下がり44点以上となった。

選択式試験と同様、総得点の合格基準点は平均点に応じて上げ下げしているので、毎年度合格基準点は平均点より約13点加算した点数となる。 参考までに各年度の平均点と合格基準点を示す。

択一式試験の総得点の合格基準

試験年度平均点(前年度比)合格基準点
平成12年度35.1点(0点)49点以上
・・・・・・・・・
平成28年度28.8点(-2.5点)42点以上
平成29年度31.9点(+3.1点)45点以上
平成30年度32.1点(+0.2点)45点以上
令和元年度30.2点(-1.9点)43点以上
令和2年度31.5点(+1.3点)44点以上
令和3年度32.3点(+0.8点)45点以上
令和4年度30.9点(-1.4点)44点以上

各科目の合格基準

選択式、択一式科目の各科目の合格基準の求め方は、総得点と比べると少し複雑である。なぜなら各科目の得点分布により決定されるからである。

各科目の得点分布は、厚生労働省ホームページの[参考3] 第54回(令和4年度)社会保険労務士試験科目得点状況表で公表されている。

選択式各科目の合格基準

選択式各科目の合格基準は、基本は各科目3点以上であるが、3点以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、各科目の合格基準点が引き下げ補正される場合がある。

選択式各科目の得点状況は下記の通りである。

令和4年度選択式試験の各科目の得点状況

試験科目 得点割合(%)
5点~3点2点1点
労働基準法及び 労働安全衛生法84.8%11.1%3.4%
労働者災害補償保険法70.1%17.1%9.6%
雇用保険法71.5%21.7%5.9%
労務管理その他の労働 に関する一般常識65.9%24.8%8.2%
社会保険に関する一般常識50.7%32.7%14.1%
健康保険法71.4%16.4%9.2%
厚生年金保険法62.8%16.5%13.7%
国民年金法75.1%16.4%6.9%

令和4年度は選択式試験で3点以上の受験者の占める割合が5割に満たない科目がなかったので、引き下げ補正は行われなかった。

択一式各科目の合格基準

択一式各科目の合格基準は、基本は各科目4点以上であるが、4点以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、各科目の合格基準点が引き下げ補正される場合がある。

択一各科目の得点状況は下記の通りである。

令和4年度択一式試験の各科目の得点状況

試験科目得点割合(%)
10点~4点3点2点~0点
労働基準法及び労働安全衛生法72.0%15.5%12.5%
労働者災害補償保険法 (労働保険の保険料の 徴収等に関する法律を 含む。)69.6%18.5%11.9%
雇用保険法 (労働保険の保険料の 徴収等に関する法律を 含む。)67.0%14.9%18.1%
労務管理その他の労働 及び社会保険に関する 一般常識63.6%16.2%20.2%
健康保険法64.4%17.9%17.7%
厚生年金保険法70.1%15.5%14.4%
国民年金法55.8%17.2%27.0%

令和4年度は択一式試験で4点以上の受験者の占める割合が5割に満たない科目がなかったので、引き下げ補正は行われなかった。

令和4年度の社労士試験結果まとめ

合格率は令和4年度(第54回)は5.3%であり、平成29年度(第49回)6.8%、平成30年度(第50回)6.3%、令和元年度(第51回)6.6%、令和2年度(第52回)6.4%、令和3年度(第53回)7.9%と比べ低くなった。

選択式では、総得点の平均点は24.6点であり前年度より2.8点高い点数であった。 また各科目の合格基準点は3点以上であった。

択一式では、総得点の平均点は30.9点であり前年度より1.4点低い点数であった。また各科目の合格基準点は4点以上であった。

また受験申込数は52,251人であり、受験者数は40,633人であった。  

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