FP試験は、正式にはファイナンシャル・プランニング技能検定という国家試験であり、合格すればファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)の国家資格を取得できる。
FP技能士は、上から1級、2級、3級の3つの等級がある。
FP試験の受験申込先は、金財(一般社団法人金融財政事情研究会)と日本FP協会(NPO法人日本FP協会)になる。
FP試験の申込先が2つあると、どちらに申込みをすればよいのか迷う人もいると思う。
2つの団体の申込先で何が違うのかまとめてみる。
FP試験の申込先で何が違うのか
FP試験は複数指定試験機関方式
FP試験の申込先がなぜ2つあるのかは、他の国家試験と比較してみるとイメージが掴み易い。
同じ技能試験である金融窓口サービス技能検定、毎年約20万の人が受験する宅建試験と比較してみる。
試験の申込先である指定試験機関は次のようになる。
各種国家試験と試験申込先
試験名称 | 指定試験機関(試験申込先) |
宅建試験 | 一般財団法人不動産適正取引推進機構 |
金融窓口サービス技能検定試験 | 金財 |
FP試験 (ファイナンシャル・プランニング技能検定) | 金財 |
日本FP協会 |
宅建試験の申込先は国土交通大臣より指定試験機関として指定を受けた一般財団法人不動産適正取引推進機構であり、金融窓口サービス技能検定試験の申込先は厚生労働大臣から指定試験機関の指定を受けた金財である。
この2つの試験とも指定試験機関が1つのため、申込先で迷うことはない。
FP試験の場合は、厚生労働省から指定試験機関として指定を受けた団体は金財と日本FP協会の2つがある。(複数指定試験機関方式)
よって試験申込先が2つあるのである。
2団体が指定試験機関として指定を受けた歴史背景としては、ファイナンシャル・プランニング技能士が2002年度に国家資格化される以前から、金財は金融渉外技能審査(金財FP)の資格認定、日本FP協会はCFP、AFPの資格認定を実施していたからである。
FP試験の申込み先で何が違うのか
FP試験は申込先が金財、日本FP協会で何が違い、何が同じなのかまとめてみたいと思う。
試験会場、試験日時
基本的なことであるが、金財のFP試験に申込んだ場合は、金財で実施する試験を受検することになる。
FP試験(2級、3級)はどちらの団体とも試験日時が同じであるが、異なる団体の会場では受検できない。これは試験を実施する団体が異なるからである。
取得できる資格
どちらの団体とも各級のFP試験に合格すれば、それに応じたFP技能士資格を取得できる。どちらも指定試験機関であるからである。
受検資格
受検資格は両団体とも同じである。
例えば、FP2級試験の受検資格の1つに日本FP協会が認定するAFP認定研修を修了した者が挙げられているが、もちろんこの受検資格は金財が実施する試験でもOKである。
また同じくFP2級試験の受検資格の1つに3級技能検定の合格者が挙げられているが、試験申込先が、3級の試験で合格した時の団体と異なっていてもOKである。
FP1級試験は、実技試験に合格すれば技能士資格が取得できる。
FP1級試験の学科試験は金財のみが実施していて、学科試験合格は実技試験の受検資格の1つになっている。
この場合でも、金財の学科試験を合格すれば、日本FP協会の実技試験の受検資格を得ることができる。
試験問題
FP3級、2級、1級試験とも実技試験の問題(科目)が、金財と日本FP協会で異なる。
尚、学科試験は3級、2級は両団体とも共通である。
技能検定合格証書の発行者名は3級、2級は金融財政事情研究会代表理事と日本FP協会理事長の連名であり、1級は厚生労働大臣名になるのは同じである。
合格証書には実技試験科目が記載される。
FP試験は何が違う?
各級のFP試験についてまとめてみたいと思う。
FP3級
取得資格
金財、日本FP協会どちらでも3級FP技能士資格を取得できる。
金財と日本FP協会の申込先で大きく異なるのは、実技試験の選択科目が異なることだ。この選択科目は合格証書に記載される。
受検資格
FP業務に従事している者または従事しようとしている者であり、特別な資格は不要である。
試験科目
学科試験は金財、日本FP協会とも同じ試験問題である。
実技試験(選択科目)は日本FP協会が「資産設計提案業務」であるが、金財は「個人資産相談業務」、「保険顧客資産相談業務」から選択して受検することになる。
試験科目
金財 | 日本FP協会 | |
学科試験 | 共通 | |
実技試験 | 個人資産相談業務 保険顧客資産相談業務 | 資産設計提案業務 |
合格基準
学科試験 60点満点で36点以上
(前半30問は〇×式、後半30問は三答択一式30問)
実技試験 6割以上
(金財は15問(1題につき3問)で三答択一式 50点満点で30点以上)
(日本FP協会は20問で三答択一式 100点満点で60点以上)
学科試験と実技試験(選択科目のいずれか一つ)の両方の合格者には合格証書が発行され、3級FP技能士と認定される。
試験日時
試験日時は、金財、日本FP協会とも同じで、年3回である。
1月、5月、9月の日曜日
学科試験 10:00~12:00(120分)
実技試験 13:30~14:30(60分)
試験会場
試験日時は同じだが、団体で試験会場は異なるので注意が必要である。
その他
学科試験あるいは実技試験の一部合格者は、合格した試験実施日の翌々年度末まで合格した試験が免除される、試験免除制度がある。
学科試験と実技試験の両方を合格すれば、3級技能士の資格を取得できる。
例えば、
学科試験合格(金財) と 実技試験合格(日本FP協会)
でも
学科試験合格(日本FP協会) と 実技試験合格(金財)
の組合せでも良い。
合格証書の発行者名は金財代表理事と日本FP協会理事長の連名で、合格を確定した試験を受検した指定試験機関より発行される。
FP2級
取得資格
金財、日本FP協会どちらでも2級FP技能士資格を取得できる。
金財と日本FP協会の申込先で大きく異なるのは、3級と同じく実技試験の選択科目が異なることだ。この選択科目は合格証書に記載される。
受検資格
以下のどれかに該当すれば良い。
①3級技能検定の合格者
②FP業務に関し2年以上の実務経験を有する者
③日本FP協会が認定するAFP認定研修を修了した者
④厚生労働省認定金融渉外技能審査3級の合格者
自己啓発の場合、①か③になると思う。
③のAFP認定研修を修了した場合、3級合格者でなくても2級の受検ができる。もちろん受検資格は金財、日本FP協会とも同一なので、どちらの団体でも2級受検ができる。
試験科目
学科試験は金財、日本FP協会とも同じ試験問題である。
実技試験(選択科目)は日本FP協会が「資産設計提案業務」であるが、金財は「個人資産相談業務」、「中小事業主資産相談業務」、「生保顧客資産相談業務」、「損保顧客資産相談業務」から選択して受検することになる。
但し、「損保顧客資産相談業務」は9月、「中小事業主資産相談業務」は1月、9月しか受検できないので注意が必要だ。
試験科目
金財 | 日本FP協会 | |
学科試験 | 共通 | |
実技試験 | 個人資産相談業務 中小事業主資産相談業務 生保顧客資産相談業務 損保顧客資産相談業務 | 資産設計提案業務 |
合格基準
学科試験 60点満点で36点以上
(四答択一式60問)
実技試験 6割以上
(金財は記述式による筆記試験で15問(1題につき3問) 50点満点で30点以上)
(日本FP協会は記述式による筆記試験で40問 100点満点で60点以上)
学科試験と実技試験(選択科目のいずれか一つ)の両方の合格者には合格証書が発行され、2級FP技能士と認定される。
試験日時
試験日時は、金財、日本FP協会とも同じで、年3回である。
1月、5月、9月の日曜日
学科試験 10:00~12:00(120分)
実技試験 13:30~15:00(90分)
試験会場
試験日時は同じだが、団体で試験会場は異なるので注意が必要である。
その他
学科試験あるいは実技試験の一部合格者は、合格した試験実施日の翌々年度末まで合格した試験が免除される、試験免除制度がある。
学科試験と実技試験の両方を合格すれば、2級技能士の資格を取得できる。
例えば、
学科試験合格(金財)+実技試験合格(日本FP協会)
でも
学科試験合格(日本FP協会)+実技試験合格(金財)
の組合せでも良い。
合格証書の発行者名は金財代表理事と日本FP協会理事長の連名で、合格を確定した試験を受検した指定試験機関より発行される。
FP1級
1級FP技能士資格を取得条件は、実技試験合格である。
1級学科試験合格は、実技試験の受検資格の一つになる。
取得資格
金財、日本FP協会どちらでも1級FP技能士資格を取得できる。
金財と日本FP協会の申込先で大きく異なるのは、2、3級と同じく実技試験の選択科目が異なることだ。
この選択科目は合格証書に記載される。
実技試験受検資格
以下のどれかに該当すれば、実技試験受検資格が得られるが自己啓発では厳しい。
・1級学科試験(金財実施)の合格者
・CFP認定者(日本FP協会)
・CFP資格審査試験合格者(日本FP協会)
・「FP養成コース」(金財実施)修了者で、1年以上の実務経験を有する者
1級学科試験(金財実施)の合格者
2、3級の学科試験は金財と日本FP協会が同じ問題で、実技試験と同じ日に実施していたが、1級学科試験は金財のみで実施する。
学科試験の受検資格
学科試験の受検資格は、実務経験が最低でも1年以上必要である。
・2級技能検定合格者で、FP業務に関し1年以上の実務経験を有する者
・FP業務に関し5年以上の実務経験を有する者
・厚生労働省認定金融渉外技能審査2級(2001年認定修了)の合格者で、1年以上の実務経験を有する者
合格基準
基礎編・・・マークシート方式による筆記試験 四答択一式 50問
応用編・・・記述式による筆記試験 5題(1題につき3問)
200点満点で120点以上
試験日時
1月、9月の日曜日
基礎編 10:00~12:30(150分)
応用編 13:30~16:00(150分)
その他
学科試験に合格した試験日の翌々年度末までに実施される1級FP技能検定まで有効である。
CFP資格審査試験合格者、CFP認定者
CFP資格審査試験合格者
CFP資格試験は6課目すべてに合格する必要がある。全課目合格までに時間がかかってもよく、一括でも、1課目ずつ受験でも構わない。
CFP試験に受験資格は、AFP資格を取得し、日本FP協会の会員であることが必要である。CFP資格、AFP資格とは日本FP協会が認定しているFP資格である。
AFP資格の認定要件は、AFP認定研修の修了と2級FP技能検定合格である。AFP資格は約2年の継続教育期間中に必要な継続教育単位を取得する必要があり、資格維持のためそれなりの勉強時間と費用が必要である。
CFP資格審査試験合格者は、6科目合格日の翌々年度末までに実施される1級FP技能検定まで有効であり、1級学科試験(金財実施)の合格者の取扱いと同じである。
CFP認定者
CFP認定者になれば、1級FP技能検定の受検資格に有効期限はない。
CFP認定者とはCFP資格試験6課目すべてに合格後に、CFPエントリー研修の受講・修了と3年間の実務経験(みなし実務研修でも可)を満たして、CFP資格試験6課目合格後5年以内に申請する必要がある。
但し、CFP資格も約2年の継続教育期間中に必要な継続教育単位を取得する必要があり、資格維持のためそれなりの勉強時間と費用が必要である。
「FP養成コース」(金財実施)修了者で、1年以上の実務経験を有する者
「FP養成コース」は金財が実施している職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練(金融実務科)である。所属法人からの申込みのみ受講できる。
実技試験科目
実技試験(選択科目)は日本FP協会が「資産設計提案業務」であるが、金財は「個人資産相談業務」である。
実技試験
金財 | 日本FP協会 | |
実技試験 | 個人資産相談業務 | 資産設計提案業務 |
実技試験合格基準
金財
異なる2つの設例課題で、「設例」に基づいて、複数の審査委員と対面の口述試験。
ファイナンシャルプランナー役の受検者が、相談顧客役の面接官と行うロールプレイング形式試験である。
設例課題各100点の200点満点で、合計120点以上で合格
日本FP協会
筆記(記述式) 2題(20問) 120分 60点以上(100点満点)
実技試験合格者は合格証書が発行され、1級FP技能士と認定される。
実技試験日時
試験日時は、金財、日本FP協会とも異なるので注意が必要である。
金財
6月中旬、2月中旬で1日2組(前半・後半)に分けて実施する。
日本FP協会
9月の日曜日
13:30~15:30(120分)
試験会場
2、3級と比べて受検地が限られている。
その他
合格証書の発行者名は厚生労働大臣名で、実技試験を受検した指定試験機関より発行される。
FP試験受検どっちで申込むのがよいのか?
自己啓発でFP試験を受検する場合、金財、日本FP協会のどっちで申込めばよいのか?
迷っている人もいると思う。
迷っていれば、次のことを参考に選択したらよいと思う。
受検する実技試験科目
申込先で実技試験科目が異なる。
受検したい実技試験科目があれば、申込先は自動的に決まる。よって実技試験でどれを選択するか決めてしまうのも1つの方法である。
金財の2級FP試験の実技試験科目である中小事業主資産相談業務は1、9月のみ、損保顧客資産相談業務は9月のみ試験が実施されるので注意が必要である。
各級のFP試験の実技試験科目
金財 | 日本FP協会 | |
3級 | 個人資産相談業務 保険顧客資産相談業務 | 資産設計提案業務 |
2級 | 個人資産相談業務 中小事業主資産相談業務 (1、9月のみ) 生保顧客資産相談業務 損保顧客資産相談業務 (9月のみ) | 資産設計提案業務 |
1級 | 個人資産相談業務 | 資産設計提案業務 |
今後の働き方
金融機関などに就職を考えている人は金財で申込むのが良いと思う。
金財は大蔵省所管の社団法人として創立されていて、金融機関では団体扱いで金財にFP試験を受検させているところが多いからだ。
また金財では金融機関で必要となる金融窓口サービス技能検定、金融業務能力検定も実施している。
一方、ファイナンシャルプランナーとして働くなら日本FP協会が良いと思う。理由はAFP、CFPの資格試験も実施しているからである。
AFP、CFP資格取得、維持には費用が掛かるが、フィナンシャルプランナー界の横の繋がり、最新の金融や経済などの最新情報の入手、スキルが継続的に維持できるというメリットがある。
ファイナンシャル・プランニング技能検定の試験で勉強する内容は、就職だけでなく日常生活においても色々な場面で役に立つ。
受検をどうしようか?迷っている人は、ぜび挑戦してもらいたいと思う。