2018年問題、2つの法改正で雇用が変化する

期限生きる
この記事は約7分で読めます。

2018年に向けて、会社は労働契約法と労働派遣法の2つの法改正の対応に追われている。
いわゆる2018年問題だ。

会社で働いている僕ら全員にも関わってくるかもしれないこの2018年問題について考えてみたいと思う。

スポンサーリンク

2018年問題とは

2018年問題とは労働契約法と労働派遣法の2つの法改正により、2018年から雇用関係が大きな転換を迎えることを指す。

労働契約法の改正

「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8月10日に公布された。
その中の大きな改正のひとつが、無期労働契約への転換(第18条)というものだ。

有期労働契約が5年を経過した労働者が使用者(企業)に申込めば、無期雇用に転換する権利が付与されるというものだ。施行日が平成25年4月1日で、5年後の平成30(2018年)年4月1日からこの権利を持つ労働者が現れるのだ。

労働契約法改正の目的

有期労働契約は正社員以外のパート労働、派遣労働をはじめとする労働者と企業が結ぶ労働契約だ。期間従業員は文字通り有期労働契約の典型である。

この有期労働契約の労働者は、不景気な時に雇止めされるのではないかという不安がいつもつきまとう。これを解消して安心して働けるようにするのがこの改正の目的である。

労働契約法の内容

同一使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換が可能となる。

 

 無期労働契約 出典:労働契約法改正のポイント(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou
/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829-01.pdf
)を加工して作成

 

通算契約期間の計算について(クーリングとは)

しかし無期労働契約への転換に関して、6か月以上空白期間があれば通算契約期間に計算されないというルールがある。

 無期労働契約の通算期間

出典:労働契約法改正のポイント(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou
/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829-01.pdf
)を加工して作成

 

企業側としては、有期労働契約が通算期間で5年になる直前で辞めてもらい、6か月以上たったら再度有期労働契約をすれば良いのである。

有期労働者側にとっては、無期労働契約に転換できなければ、5年以上その企業で働きたいと思っても、5年ごとに一旦6か月以上空白期間を設けなければ再雇用してもらえないことになるのだ。

労働者派遣法の改正

平成27年9月11日に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立した。労働者派遣法の改正のことで9月30日に施行された。

以前は専門26業務と呼ばれる通訳、研究開発、ソフトウェアの開発などの特定の業務に従事する場合には派遣期間に上限はなかったが、改正により施行日以後に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣には、すべての業務で次の2つの期間制限3年が適用されることになった。

派遣先事業所単位の期間制限と派遣労働者個人単位の期間制限である。
この個人単位の期間制限を超えてしまう日(抵触日)が2018年9月以降に集中して発生することになる。

労働者派遣法改正の目的

派遣労働というのは、臨時的、一時的な働き方の形態であり、常用的な形態ではない。
今回の改正の一つが派遣労働者の雇用安定であり、労働者派遣の期間制限の見直しである。この制限を全業種にかけることにより、常態化している派遣労働者を減らすことを目的としている。

期間制限には2つある。

  • 派遣先事業所単位の期間制限・・・派遣先として同じ事業所に派遣が可能な期間は、原則として3年までとなる。
  • 派遣労働者個人単位の期間制限・・・同一派遣労働者を、派遣先事業所の同一組織単位に派遣できる期間は3年が限度となる。ただし派遣会社に無期雇用されている場合は期限の適用がない等の例外もある。

労働者派遣法の期間制限3年の考え方

派遣先事業所単位では期間制限は3年までである。しかし3年を超えて派遣を継続させる場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合などからの意見を聴けば可能となる。

派遣労働者個人単位の期間制限も3年までであるが組織単位を変えれば、同一の事業所に、引き続き同一の派遣労働者を(3年を限度として)派遣することが可能となる。(事業所単位の期間制限による派遣可能期間が延長されている場合)

 

労働者派遣法の期間制限 出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000098917.pdf)を加工して作成

法改正の目的に逆行する企業も出現する

解雇

労働契約法、労働者派遣法の2つの改正の目的は雇用の安定化を目的としている。実際に雇用の安定化に向かうのだろうか?

1990年代の金融危機とリーマン・ショックを経験した企業は、好景気時の労働者としての側面と、不況時の調整弁としての役割として非正規雇用化を進めてきた。

一部の企業は、2018年以降法改正の目的に逆行する対応を実施するのではないかと思う。

有期雇用は無期雇用転換可能直前の5年で雇用修了

企業は無期雇用契約になることに消極的になり、無期雇用転換直前の5年までの労働契約、また再度同一人物を雇用する時は半年以上の空白期間を設け、再度5年の有期雇用契約を結ぶことが常態化する。

人材派遣会社も無期雇用転換直前の5年で雇い止めが発生

人材派遣会社でも、通算で5年を超えて反復更新している有期雇用労働者が無期転換を希望する場合、無期雇用しなければならない。そのため派遣社員を無期雇用することが難しい場合、無期転換阻止のため5年で雇い止めが発生する。

有期雇用社員の派遣社員への切換え

この5年ルールは直接契約の労働者が対象なので、派遣会社を通じて行えば有期契約をしていた企業は無期雇用の義務が免れる。よって有期雇用社員を使用している企業は派遣社員に切換えることになる。

 

法改正により企業が淘汰される

2つの法改正による2018年問題で、企業の雇用制度が大きく変わることは間違いない。

今までは非正規雇用は不況時の調整弁として利用されてきた。2018年以降も調整弁としてだけに利用価値を見出している企業は徐々に淘汰されていくと思う。

なぜなら各種リスクが徐々に顕在化し、企業が衰退していくと考えられるからだ。

有期雇用労働者、派遣労働者のモラル低下

雇用の安定化を目的として法改正が行われても、その目的に抗うような企業は非正規労働者に対して、不景気になればクビにするという強い意志を表明したことになる。当然のことながらそのような企業で働く有期雇用労働者、派遣労働者は、帰属意識が薄れ労働モラルが低下するだろう。

企業の不祥事発生リスクが増大

企業は同じ条件で今まで通り雇用しようとすると、有期雇用契約の6か月以上の空白期間、派遣労働者の場合は別の人の雇用が必要である。そのため企業の労働能力が長期にわたり低下する。

企業としては売上を低下させたくないので、売上、販売につながる業務に労働力を集中する。そうなれば企業の生命線である品質管理能力が低下し、不祥事が発生するリスクが増大するだろう。

有期雇用労働者、派遣労働者不足の慢性化

有期雇用労働者、派遣労働者が同じ企業で今まで通り働きたくても、法改正が足かせとなり働くことができない。もし同じ企業で通り働きたければ、一旦長い空白期間を設ける必要がある。

そのため一旦寮を出る必要もあるし、その間無収入になることも覚悟する必要がある。そのような厳しい環境下で誰も働きたくはないだろう。自然と労働者はその企業を敬遠するようになる。

自己啓発で自分の価値を高めろ

自分の価値を高める

法改正により、有期雇用労働者は無期雇用転換に前向きな企業に殺到するだろう。

また、派遣労働者も人材派遣事業者で無期雇用してもらえるところに殺到するだろう。派遣会社に無期雇用されている場合は派遣先で3年という期限の適用がない。よって同一の派遣先でも安心して働くことができる。

しかし、そのような好条件の企業に雇用される労働者は一握りである。人気が集中するということは、ライバルがひしめき合っているということだ。もし他の労働者と同じ知識、能力しかなければ、必要な時だけ調達すれば良い部品と同じ価値にしか映らないだろう。

 

どんな時代でも、価値ある人財を採用したいという企業の願望は変わらないのだ。
自己啓発で自分の価値を高めている人にとっては、この法改正は好機になると思っている。

生きる
スポンサーリンク
自己啓発で切り拓く